2016.06.20

●朝から●

本日もお立ち寄りありがとうございます。

 早朝の庭に響き渡る鳥のさえずり。

 さえずりというより 雄叫び というレベルの大音量。こんなのが毎朝つづいたら、睡眠不足になります。

 声の主は、ご存じ、特定外来生物のガビチョウでございます。庭かと思ったら となりの家の電線にいました。

 中国では、昔から(今でも)人気の鳥で、鳴き合わせ会なども開催されています。

 日本にも、ある時期、大量に輸入されて飼育されていました。ところが、色が地味だったり、鳴き声が大きすぎたりして、けっこうな数が遺棄されました。

 遺棄と聞くと なんで? 思う方も多いかと思われますが、古くからある日本独特の飼い鳥文化の中には、あるていど飼育したら、そのあと野に返す という風潮がありまして、これは、オオタカを用いた鷹狩の世界にもみられます。ある意味、循環型の消費形態と言えますので、国産の生き物とつきあう方法としては、悪いことではないのかもしれません。昔は、そんなに長距離の移動手段もないですから、国内移入による遺伝子の攪乱などというめんどくさい話も起きにくかったと思います。ところが法律のせいで、古くからの循環型・小規模消費の飼育文化が崩壊し、輸入個体を購入しなければならない世の中となりました。そのせいで、放しちゃったらまずいだろってな、まるっきりの外来種も沢山飼われて、用が済んだらお外にリリース!となり、今日の問題へと至ります。

 日本に定着したガビチョウは、数年前までは、藤野や高尾山などのちょっと山奥に生息していましたが、ここ数年で里山に降りてきて、さらには、今朝のように宅地でその姿を見かけるようになってきています。庭の植え込みで繁殖した例も散見されるようになりました。

 怪我をした野鳥や親からはぐれたヒナが保護されて来る中で、特定外来生物が持ち込まれるほどやっかいなことはありません。一般の方は、種類の特定ができませんから、病院に来るまでの間に、十分愛着を感じ、感情移入が完了して来られます。その段階でいきなり、「特定外来種なので殺処分です」なんて伝えた日には、獣医は鬼だ悪魔だとののしられます。だからといって、「この子は私が守ります」といって、持ち帰ろうとする保護者を、そのままにするわけにもいきません。飼育しているところをみつかったら逮捕されますから。

 今朝、庭に響いたガビチョウの絶叫を聞いたとき、近い将来、ガビチョウの保護件数がヒヨドリとムクドリを超える日が来るのかもしれないと 暗い気持ちになりました。だって、庭に営巣したガビチョウを、一般家庭のご家族は、猫やらカラスから守りつつ、巣立ちを暖かくサポートしすよね?? 確実に殖えますよ。 ガビチョウ。

 駆除や殺処分については、わたしとて鳥好きの一人として心が痛みます。ただ拾ってきて病院に丸投げして好き勝手なこと言う人たちに比べたら、よっぽど命の重さを尊重していると自負しています。しかし、法律を遵守すべき立場の専門家として 手を汚さないといけないし誹謗中傷にも対応しないといけない。正確には、いけない のではなく、そういうハメになる というのが実情。頭が痛いです。

 いちばんいいのは、拾ってこないこと。なんですけどね・・・・ 

 でも  拾ってきますよね・・・怪我した鳥が自分んちの庭でのたうちまわっていたら。

 環境省様。 こんなことを個人の現場判断と対応にまかせっぱなしにするのではなく、なにか具体的な受け皿をつくってください。そもそも我々開業医に、外来生物を殺処分しなければならない義務はありません。
 法律を作る前の 想像力 がなさすぎです!

 まあ そのうちに朝4時とかに安眠を妨害された日本国民が立ち上がり、ガビチョウ憎し! 殺してしまえ!という世論が形成されるかもしれません。

 勝手なもんですな・・・。

   以上。三鷹・吉祥寺のペットドクター いのかしら公園動物病院の石橋でした。